女の子の自閉スペクトラム症(アスペルガー)

近年は早期診断が普及して、幼児期に自閉スペクトラム症が診断されるケースが増えています。ただ、現在20歳以上の当事者の方はまだ早期診断自体が進んでなかったため、とりわけ知的な遅れのない、いわゆるアスペルガーの方たちと、現在でも言葉の遅れや学習面の困難さや問題になる行動がない場合、とりわけ女の子の場合は未診断で支援対象にもならないままで思春期を過ぎてしまうケースが少なくありません。

親御さんも、お子さんに障害があるとは思わずに「ちょっと変わってる」と感じる程度で子ども時代を過ごすことが多く見られます。

 

どのように変わっているのか?よく見られるのは、ちょっとした行動に本人なりのこだわりが見られたり、例えばある子は刻みネギの青い部分と白い部分をより分けて食べたり、本人なりの順序やこだわりがよく見ると分かる程度にあったりします。

また、女の子でもごっこ遊びにあまり関心がないことが多かったりし、それよりも図鑑を見たり何かを集めたり、運動が苦手でない子は登ったり揺れたり回る遊具を好むことが多いものです。

性格的にはお母さんに従順なタイプとマイペースなタイプに分かれるようですが、総じて幼児期には手のかからない子と周囲から見られます。

 

就学後、特に小学校中学年以降に、女の子同士のグループにうまく入れなくなるあたりから、本人の困り感が強くなってきます。

これは彼女らの特性のためにミラーニューロンの発達が遅れ、定型発達の子のように友達がどうして欲しいのかを無意識に察知することが難しいからです。

大抵の場合は、自分の反応が変に受け取られることを小学校高学年までには気づき、それを隠そうとしたり誰か他の子を真似ることによって乗り切ろうとしたりしますが、それが上手くできなかったり疲れて嫌になって孤立して過ごす場合も多いものです。

仲間はずれやいじめにあうこともよく見られます。

思春期は彼女らにとって大きな関門で、うまく適応できた場合にはその個性をグループに受け入れられて安定できますが、そうできなかった場合は明確ないじめがなくてもトラウマになるような体験となることがしばしば見られます。例えば行事やグループ学習などでどのグループにも入れてもらえないなどの体験を繰り返し、それを誰にも相談できず、自分が人と違うと感じて恥じているなどのエピソードはとても胸が痛みます。

 

周囲がその子が困っていることに気がつかない場合、その子は自分が困っていることを恥じて隠そうとしますので、そのトラウマはさらに大きくなり、何らかの精神的症状(二次障害)を発症したり、大人になってから生きにくさや自己評価が低くなり、他人に助けを求めることが苦手な人になりがちです。

彼女らは一見、小さい頃は反抗期も自己主張もない育てやすい子に感じられても、内面ではたくさんの困り感を抱えていることが多いので、養育者や教員の方にはそれをまず察知して支援するきめ細かな配慮が、定型(普通の子)より必要となってきます。

 

成長した時、困った時にはそれを自分で気づき、隠さずに言語化して、周囲にうまく助けを求められる事が、特にこのような女の子にとって最も基本的で大切なスキルとなります。

そのためには養育者や周囲の大人が、その子の困っている位置まで降りてきて、「どこが困っているのかな?一緒に考えよう。」という姿勢が大切になってきます。これは発達障害に限らず、すべての人に当てはまることですが、うまく助けられた経験を積むほど、困った時に上手に助けを求めるスキルが上がっていきます。

参考文献:自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界 サラ・ヘンドリックス