冬季うつはどんな症状?
日差しが薄くなり、寒さも増してきた今日この頃です。毎年この季節になるとゆううつになるという人も少なくありません。特にここ数年はコロナ禍もあり、人と直接接する機会も激減して、楽しみにするイベントもなく例年に増してこの季節は辛いと思います。
冬季うつは日照時間が減ることによって脳のセロトニンの分泌が少なくなるなど言われていますが、寒さや目に映る緑がなくなり、無味乾燥の茶色や灰色になること、寒さのために運動する機会も減ることも関係があるのではないかと思います。
具体的には、ゆううつで動きたくなかったり、不安になったり、睡眠時間が長くなる、人と積極的に会いたくなくなる、エネルギーが乏しくなるなど一般的なうつ症状に似ていますが、一般的なうつは朝方が一番ゆううつな場合が多いのと違い、冬季うつは日が暮れる頃にゆううつになる点が異なります。
クリスマスやお正月などのイベントでまだ気がまぎれる時期はましですが、お正月が終わり寒さが一段ときつくなる1月末から2月は辛いようです。三月になり、日の光が明るくなってきて寒さが和らぎ、春の気配を感じ始めるとやっとホッと一息つけるという人がこの症状には多いのではないでしょうか?
「生物の歴史と脳の進化についての一考察」で触れたように、哺乳類としての人類は集団生活に依存していると同時に日照時間や自然環境にも依存しています。つまり対人関係や自然環境によって心の安定度が変わってくることが自然なあり方のようです。
北欧では冬の間太陽が昇らず、寒さと暗さが原因の冬季うつが深刻な社会問題となっています。自殺率も上がります。
冬季うつの解消法
さて、この厄介な冬季うつの解消法について。もちろん重度になると精神科に受診してお薬を飲むことで強制的に脳のセロトニンを引き上げるという方法に頼る必要もありますが、そこまでではない場合、次のような方法があります
明るい光を浴びる
冬季うつの直接原因は冬季に暗くなることですので、なるべく明るい光を浴びる時間を増やすことが有効です。ただ、冬の朝早く起きて散歩などできるとベストなのですが、寒い冬の朝には出かけることさえ億劫になりがちですね。そこでまず手軽なところから、例えば昼休みやお昼前後の比較的暖かい時間帯になるべく長く日光を浴びるようにしてください。幸い冬の紫外線は直接浴びても強くありませんし、マスクをしないといけない場合でも明るい光を目に入れるだけでも効果があるそうです。散歩できない場合でも室内でなるべく明るい日光が差し込む部屋で過ごしたり、ガラス越しでも日光浴するのも有効です。
なお、最近はこのような冬季うつの対策として光を浴びられる蛍光灯などの製品も販売されています。そこまででなくとも、ただ室内を明るくするだけでもかなり違います
心許せる友人や家族とのコミュニケーションを増やす
哺乳類としての人間は、安心できる人との会話で心安らぐような構造の脳を生まれつき持っています。人類の長い歴史の中、暗く寒い冬に囲炉裏や暖炉を囲んで話をすることは冬の暗さや寒さの不安から人を安心させてきました。残念ながら現代ではそれほど安心できるコミュニケーションが取れる、恵まれた環境の人は一部分だと思います。が、zoomやスカイプなどの文明の利器でもその効果の一部は体験できるので、寒い冬にこそ引きこもらずになるべくそういうコミュニケーションが取れる機会に積極的に参加してみましょう。
もちろん効果的なのは気の置けない相手とのコミュニケーションですので、気を遣う相手や話していて楽しめない相手とでは逆効果になってしまいます。
冬季うつはちょうど更年期障害のように、脳内ホルモンの変化という器質的な原因で起こる症状とも言えますが、その背景にはうつになりやすい何らかの精神的な傾向がある場合もあります。例えば、発達性トラウマのブログで書いたように、幼少期に養育者が子どもの不安やニードに添って落ち着くことを助けるような関わりが少なかった場合、大人になってもその人は自分不安やうつを慰めたり調節する能力が乏しくなってしまう可能性があります。すると太陽の光が暗くなるというような自然環境のちょっとした変化にも敏感になりがちで、落ち込むことも増えるのではないかと私は考えています。
毎年辛い思いをする方も多いかと思いますが、そのような場合でもカウンセリングでゆっくりと気持ちを話し合っていくことは有効だと思います。