お子さんの不登校に悩むご両親のカウンセリングがなぜ効果的か

 不登校の増加とご両親の悩み

 コロナ禍になってから、不登校が増えていると言われます。友人と出かける機会も制限されて、親しい友人を作るきっかけも減り、大人でも苦しい制限の中で、成長期のお子さんには様々な悪影響があると思います。

 こちらの相談室にいらっしゃる保護者の方も、お子さんの不登校に悩み、将来の不安を募らせていらっしゃいます。不登校自体は決して少なくなく、今では中学ではクラスに2~3人いてもおかしくないほどに増えています。原因も、いじめなどのはっきり理由の分かる不登校はごく一部で、多くはちょっとしたきっかけや、きっかけも見つからず不登校になるお子さんがほとんどです。

 ですので、不登校になってしまったことに対して、ご両親の不安は、特に休み始めた当初はとても大きなものがあります。「嫌なことから逃げる大人になってほしくない」「将来ずっと引きこもってしまうのか不安でたまらない」「周りのお子さんは皆普通に学校に行っているのに、なぜうちの子はいけないんでしょう?」これらの言葉を仰るご両親とたくさんお話をしてきました。また、「朝は嫌がるのですが、がんばって行かせると学校では普通にしていると先生に言われました。」これもよくお聞きします。「行きたがっているのにどうしても行けない本人がかわいそうです。」ともいわれる方も多いです。

 親御さんは大抵、「なんで行けないのか、何が辛いのか話してほしいのに、聞いても言わないんです。」と仰います。お子さんの気持ちを知りたいのに、話してくれない、力になりたいのに何もできないという無力感も訴えられます。

 不登校の最中はお子さん本人にも自分の気持ちが分からない

 ですが、不登校のお子さん自身、なんで学校に行けないのか分からないのです。不登校を卒業して大人になってから「あの頃はなんで行けないのか分からなかった。でもすごくつらかった。」「覚えていない(ほど苦しかった)」などと話してくれます。ただ、「自分が学校に行けないことでお母さん(お父さん)を苦しめている。自分は価値のない人間だ。」と思い込んで自分を責めている場合が多いものです。

 まず、ご両親からのお子さんの話を参考にします

 不登校のお子さんに悩むご両親の相談をお受けして、お子さんのカウンセリングを望まれる場合、私はまず最初にご両親のどちらか一方か、あるいは両方に来ていただいて、お子さんの生育歴やお父さんお母さんとの関係、兄弟との関係、友達関係や幼稚園学校での様子など、かなり細かくお聞きして一緒に考えるようにしています。なぜならば一概に不登校という現象の中でも、さまざまなタイプがあり、しっかりと背景を聞いた上でないと正確なアドバイスが難しいからです。例えば、発達障害の有無や、思春期に多い統合失調症の場合は、アドバイスが変わってきますし、病院への受診をお勧めすることもあります。リストカット、強迫神経症、摂食障害などが併発する場合もそれがない不登校よりも多少難しくなってきます。

 不登校のお子さんの予後は悪くない

 ただ幸い、不登校のほとんどは、そのような問題を併発しない、病院受診の必要も少ないタイプが多く、そしてそのような不登校は大人のうつ病よりも予後が良いのです。つまり問題がこじれない限り成人になる頃には不登校を卒業して自分の人生を見つけていけるように成長していく子が多いのです。そのまま引きこもりになってしまうお子さんはごく一部です。そして現在では、不登校でもその後の人生に不利益がないようにたくさんの選択肢ができ、大学に進学するお子さんもたくさんいます。

 このような不登校に悩むご両親がいらっしゃった場合、私の仕事はまずご両親の不安を少しでも軽くして、お子さんが自然に心が安定するのを助け、その回復をご両親と見守れるようにお手伝いすることだと感じています。

 親御さんのカウンセリングの意味

 「子どものカウンセリングを受けさせたい」と考えておられるご両親は多いのですが、不登校になってしまった中学や高校生の年齢のお子さんがカウンセリングを継続することは実際大変難しいのです。考えてみれば当然で、学校に行くことができない思春期のお子さんが、家を出て知らない相談室の見知らぬおばさんに会うこと自体、大変なエネルギーがいることです。それでも一度ぐらいは顔を見せてくれて、話をしてくれることはありますが、継続的な面接はとても難しいというのが私の経験的な実感です。

 それよりも、ご両親、特に日ごろ一番接する機会が多い、多くの場合はお母さんと継続面接を重ねてお子さんの様子やその変化を聞きながら対応をアドバイスしたり、お母さん自身の不安やその背景についてお話しいただいたりして、不安を軽くして、適切な距離感や対応が自然にできるようになることで、お子さんは家庭で安心感を持ってゆっくり休めるようになります。そして不安が軽くなり体調が落ち着いてくると、何か始めたい気持ちが自然に湧いてきます。そういう状態になってからお子さん自身が選んだことを始めると、お子さんは一人でその後の人生を切り開く力をつけていけます。その都度その都度の状況に合ったお子さんへの対応のための適切なアドバイスができることも親御さんが定期的なカウンセリングを受けることの大きな利点です。

 あるいはその過程は人によってはとても長い道のりになるかもしれません。もしかすると親が望んだ進路を選ばないかもしれません。けれどそのような過程を通った回復は、一番堅実で問題がぶり返すことは最小限になるでしょう。

 と、このようにざっくりと書きましたが、不登校になったお子さんを持つお母さんの、特に初期の不安は、個人差はありますが大変大きなものがあります。ですので私はお子さん自身よりも、一番身近で一番不安に感じていらっしゃるご家族、多くはお母さんの継続面接をお勧めしたいのです。その過程でご自身の生き方を見直して、楽に生きられるようになるお母さんも少なくありません。親子ともに楽に自然に生きられることをお手伝いするのがカウンセリングの目標の一つだと思います。

 

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