マインドフルネスと精神分析

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 最近、よく話題になる「マインドフルネス」とは、元々仏教で修行するための技法です。

「今、何を感じているか」に焦点を当てて意識することで、自分が巻き込まれていた感覚、思考、感情をはっきりと意識的に体験していくというものです。

仏教がアメリカに渡り、心理学と一体になり、マインドフルネスが生まれました。

 現在、アメリカで最も流行している心理療法かもしれません。

 マインドフルネスの良さは何かというと、一人でも可能で、いつでも実践可能な点です。忙しい現代人のライフスタイルに合っていると思います。

 ただ、入りやすいからといって決して実践が易しいわけではありません。毎日時間を決めて瞑想する習慣が必要ですし、我流の瞑想法に陥って進歩しないことも多いでしょう。仏教では最終的に解脱、さとりを目指しますが、やはり実践にはよい師に恵まれる必要があると思います。

 私が注目しているのは、このマインドフルな状態が、精神分析の自由連想に大変よく似ているということです。

 自由連想では、「思い浮かぶことをなんでも自由に口にしてください。」とお願いします。これは慣れない人には結構難しいことで、自分の心を自由に口にすることはほとんど不可能なものです。

 ただ、これも瞑想と同じで一つの習慣になってしまえば、これまで口にしなかったことをだんだん口にできるようになってきます。

 たとえば、自分のご主人や奥さんについて不満や怒りを持っていたとしても、「それはお互い様だから」とすぐに打ち消して忘れようとしていると意識には出てきません。それが緩んでくると少しずつ自由に自分の感覚や感情を口にできるようになっていきます。

 するとこれまでどうしても消えなかった抑うつ感が消えたり、頭痛が消えて心が軽くなったり、不思議なことも起こってきたりします。これは、自分の感情や感覚を否定せずに受け入れることで、無意識の負担が軽くなったせいです。このようなことと同じことがマインドフルネスでも起こってくるため、精神的に健康になる効果があるのですが、独学でマインドフルネスをしてそこまでたどり着くのは結構大変なように思います。

 人には無意識の感情を意識しようとすると「抵抗」が起こります。たとえば、自分はご主人や奥さんの言動に怒っていると気がついてしまったら、もしかすると喧嘩になって見捨てられるかもしれない、と無意識に思っていたとすると、怒りの感情を認めることに抵抗が起こるでしょう。

 そのような時にかじ取りをして、本質から逸れていかずに、しかもその人が苦しまないように進めていくのがカウンセラーの役目です。なので気が付くと、以前よりもいろいろな物事を恐れなくなり、自分に自信を持てるようになってきたと、続けられた方は大抵おっしゃいます。

 マインドフルネスと精神分析的心理療法は、目的はそれほど変わらないでしょう。これまで無意識に生きてきた部分を意識的に生きることによって迷いや不安を減らすことだと思います。

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