愛着(アタッチメント)障害とそこからの回復

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  愛着(アタッチメント)という言葉を聞いたことがありますか?

最近では「愛着障害」という言葉がかなり一般でも使われるようになってきました。

 専門用語の愛着(アタッチメント)とは、子供が養育者を通して不安を和らげようとする行動を言います。

赤ちゃんは、世話をする養育者との間にある関係を形成して、不安な時にはその養育者に近づいて不安を軽くすることを覚えていきます。

ボウルビーという心理学者の有名な実験で、哺乳瓶をつけた針金の猿の人形と、布でできた、哺乳瓶をつけていない猿の人形のどちらに子ザルが近づくかというものがあったのですが、子ザルはお腹がすいた時以外は布でできた猿の人形のそばにいたということです。

 猿の赤ちゃんにとってさえ、空腹を物理的に満たすよりも、柔らかく安心を誘うような存在のほうが不安を和らげると感じたのでしょう。

 母親の近くにいると安心するという感覚は、外敵から未熟な児を守るための、哺乳類に共通する本能のようです。

 ところが人間にとっては、この本能はさまざまな厄介な現象を引き起こします。

 子供が辛いとき、不安に駆られた時に養育者(とりあえず母親とします)の元に戻ることによって不安が解消されたとしたら、その子はまた元気になり、未知のものごとに挑戦する勇気が出てきますが、母親が一定の安心感を提供できないとき、子供の辛さや不安は解消されず、いろいろな不具合が生じます。それが後に神経症的な症状になることもあり得ます。

 母親が安心感を提供できないとはどんな状況でしょうか?

 例えば、子供の様子や話に対して母親のほうが不安になり、子供を安心させられないこともあるでしょう。また、子供の不安に気が付かなかったり過小評価してしまう母親もいます。

 あるいは、母親自身が混乱していて、その時々で対応が全く異なる場合も、子供は母親から安心を得ることができません。

 子供の気質と母親の気質があまりにも違う時も、やはり子供に安心感を提供することは難しいものです。

 

 アタッチメントがうまく形成されると、子供はやがて母親の役割を取り入れ、自分自身で不安な気持ちを静める能力を少しずつ身に着けていけます。後に思春期や青年期になっても不安やストレスに強くなります。

 

・・・ただ、そのように幸運に恵まれた人ばかりではありません。特にこのブログを読む人多くの人は、「自分はそうではなかった。」と思うのではないでしょうか?

 ご安心ください。恵まれた母子関係を持てなかった人でも、たとえ大人になってからでも取り戻すことができます。子供のころの辛いエピソードでも、感情をこめて詳細を語ることができる人は、自身の子供のころの母親との関係を繰り返さずにうまく子育てができるという研究もあります。

 つらい過去、分かってもらえなかった不安や怒り、母親(父親)への愛情と怒りや悲しみの入り混じった気持ち。そういったものも含めた現実を自分の体験として受け入れることが、その否定的な影響から逃れる一番の手段だということが、研究からも私自身の臨床体験からも差し示されています。

 

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