発達障害者にとってよい生活習慣

発達障害の方への治療的アプローチで、案外見落とされがちなのが、運動、食事、睡眠などの生活習慣のアプローチです。

発達障害が脳の器質的問題であることを考えると、身体としての脳によい生活習慣を身に着けることがよいことなのは当然でしょう。

「生活習慣を整えること」は、投薬やカウンセリング、SSTと違って、大人にも子供にも有効で、専門家に頼らずに誰でもできる上に、かなり効果的なのです。

では、実際にどのような点に気を付ければよいのでしょうか?

運動は、心拍数をあげることで脳の血流を増やし、脳の機能を高める効果があります。具体的には最低20分以上の有酸素運動が良いでしょう。

この習慣は、どのようなタイプの発達障害にも有効ですが、特にADD,ADHDに対して効果的です。ただ問題は、ADDはめんどくさがり屋の人が多いために、そしてADHDは単調な運動が嫌いなために、コツコツと長続きした週間にすることが難しい点です。けれど、脳機能を高めるためには、その人に合った運動を見つけて習慣づけることが大事です。

食事も、見落とされがちですが、大切な要素です。

もちろん、栄養のバランスの良い食事を心がけることが大事ですが、さらに発達障害者の場合、甘いものと炭水化物のジャンクフードには特に気を付けましょう。朝食に菓子パンというのもよくありません。

これらがなぜ良くないのかというと、血糖値の激しい上昇と降下をまねき、精神的に不安定になったり激しい眠気に襲われたりするからです。

ブドウ糖なども脳に良いと言われています。けれど、食べた直後は頭が冴えますが、食べてから1時間後ぐらいに、インシュリンが大量に血中に放出されるために、ものすごく眠くなります。この激しいジェットコースター状態が脳にはよくありません。

もちろん、白米も炭水化物ですので、それだけを食べると同じような作用があります。意識的に野菜を取ることによって、糖分の血中への吸収を穏やかにして身体と脳への負担を減らしましょう。

コーラや炭酸飲料にも糖分がかなり入っていて、吸収が早いので要注意です。PDDの人の中には偏食で、気に入ったものばかりを食べ続ける人も多いので、この点には気を付けてください。

睡眠は、発達障害を持つ人にとってとりわけ重要です。

発達障害を持つ人は、そうでない人に比べて必要な睡眠時間が長めの人が多いので、自分にとって最適な睡眠時間はどれぐらいなのかを知っておくことが大事です。発達障害者にとって睡眠不足は普通の人以上に堪えます。

また、十代まではそれほどでもありませんが、大人になってから睡眠障害になりやすい傾向があるので、特に気を付けてください。昼間、脳が興奮すると、夜になってもその興奮がなかなか醒めない傾向があるので、夕方からは意識してリラックスできるように気を配ってください。楽しい趣味も、次の日が休みでないのならばほどほどにして、休みの日のために取っておきましょう。

それと関連するのですが、ゲームは極力控えるほうがよいでしょう。今の時代、ゲームを全く禁止するのは難しいでしょうが、お子さんが小さいころに診断されたのならば、家にゲームを置かないで、代わりに本を与えるなどをすることができるならば、それに越したことはありません。

発達障碍者にとって、ゲームは中毒性があるのです。止めることが想像以上に難しいのです。私はスクールカウンセラーをしていて、ゲームにはまってしまってなかなかそこから出てゆけなくなるために、引きこもりをなかなか脱せないお子さんをたくさん見てきました。

もし、どうしても、ゲームが取り上げられないのであれば、ゲームをしてもいい時間の制限をして、その他の時間はゲーム機を保護者の管理下に置きましょう。思春期になると、このような規制が難しくなるので、ぜひ幼児期、児童期までにその習慣をつけてあげてください。

このように挙げてゆくと、面倒でイヤになるかもしれません。確かに、面倒なことが多いのですが、発達障害は脳の器質的、機能的障害です。このようなコツコツとした「底上げ」の努力によって、その脳の機能もぐんと高まってゆきます。

私自身も、これまで、成人で診断を受けた人たちで、このような地道な努力をしていって、自分の特性をしっかりと理解することによって、社会で能力を発揮している人たちをたくさん見てきています。

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