学校に行けなくなった不登校のお子さんを持つ親御さんは、よく「なぜ学校に行けないのか、理由を知りたい。」と、答えを探します。が、私の見ていた多くの例で、「これ」といった理由があって学校へ行けないというお子さんはほとんどいません。
学校でのトラブルをきっかけに不登校になる場合もありますが、それが解決してもやはり学校へ行けないのです。
不登校の子供を持つ親御さんは、お子さんが不登校になったことについて、ご自分を責める方が多いのですが、私の見た限りでは、不登校になったお子さんを持つ親御さんや、その家庭には特別な問題はありません。逆に言うと、どんな家庭に育ったどんなお子さんでも、不登校になる可能性があるのです。
ただ、特別な問題は見当たらないのですが、いくつかよく聞く共通のエピソードはあります。
子供のころから他の兄弟よりも親に対して反発する(手がかかる)ことが少なかった。
大人しくて静かだったという場合だけでなく、活発で明るいお子さんだったといいう場合もありますが、親(特に母親)に対して反発したり文句を言ったり、手のかかる問題を持つことは総じて少ないようです。不登校が、初めて親を困らせる行動だったという話もよく聞きます。
また、家族以外の集団、親戚や保育園では大人しくて口数が少なく、ひとりではみんなの中になかなか入ってゆけなかったという話もよく聞きます。
これらの話から私が感じる、不登校のお子さんたちの印象は、
静かでおとなしいか、活発で陽気に振る舞うか、いずれにしても、家族の中で最も感受性が強い人。そのため、家族の葛藤に一番影響を受けやすい。
自分の怒りを人にぶつけたり、甘えることが下手。
特にお母さんに対して、「迷惑をかけてはいけない」と言う気持ちが強く、辛いことがあっても打ち明けて頼れない。自分で抱えてしまう。
自分の感情を言葉で表現することが下手。
こんな印象を持っています。
子供は成長の過程で、母子関係へ、そして兄弟、父親、家族の中へ、そして同級生や学校へと、世界が広がってゆくものですが、不登校のお子さんは、それとは逆に、狭い世界に留まり、外の世界を排除することで、自分の心の安定を守ろうとしているようにも見えます。
いったい何から守るのか?私にはそれは、うまく出すことができないで自分の中に溜まった嫌な気持ちのような気がするのです。
そしてこのことは、前回お話した、「子供が親を責める理由」にも関連します。子供は何かの理由で、自分の中に溜まった嫌な気持ちを表現することができなかった。よくある理由は、「お母さんを悲しませたくなかった。」などですが、そのためにそれがずっと子供のこころの中に溜まってゆき、不安のために学校に行けなくなったというようなことがよく見かけられます。
だから、まずその気持ちを語らせてあげることが、回復につながる重要なカギなのです。