摂食障害についての注意点

摂食障害、特に拒食症は、時に生命の危険を伴う病気です。

カウンセラーが一番恐れるのは、クライエントが命を失うことです。普通、精神疾患では自殺を除いて死に至る病気はないのですが、摂食障害は別です。重度の場合は命を失う可能性のある病気なのです。

私たちスクールカウンセラーの集まりではよく、「どの医療機関が摂食障害に向いているか?」が井戸端会議の話題に上ります。摂食障害の場合、どこの医療機関でもよいというわけにはいきません。なぜならば、必要ならば内科検査や内科的な治療もできる、もちろん摂食障害の精神的なケアもできる医療機関でないといけないからです。つまり、心の治療だけでなく身体への治療も必要になってくるということです。

私の経験では、摂食障害で、身体的な治療が必要になってくるような事例に出会うのは、相談室よりも中学高校のスクールカウンセリングが多いのです。それは多分、摂食障害の方がその症状だけで悩んで相談室を訪れることがまれだからでしょう。

逆に、学校での摂食障害の場合、「こんな体重になるまで、よく平気だったね!」とびっくりするぐらい、本人は元気で活動的です。けれどその異様なやせ方におかしいと気が付いた養護教諭や保護者の方から相談を受ける場合がしばしばあります。

私が見立てる場合のざっくりした体重の目安として、平均的な身長の女性の場合、40キロを切ったら危険ゾーンで、要観察です。医療機関での検査も必要でしょう。35キロを切ったら入院を考えます。そして30キロを切ったら、生命の危険のある数値と理解しています。これはあくまで私の感覚ですが、多くの医師や臨床心理士も同じような感覚だと思います。

実際、体重が極度に減少すると、突然の心停止や衰弱死、低血糖での死亡のリスクだけでなく、脳の委縮や将来の骨粗鬆症のリスクなど、さまざまな後遺症が残る場合もありますので、決して軽く考えないでほしいのです。

拒食の場合、多くの場合当事者は自分が重大な病気を抱えているという意識に乏しいのですが、本人も周囲の人も、けっして安易に考えることなく、重大な病気であるという認識を持ってほしいのです。

もちろん、命の危険のある場合の身体面の治療だけでなく、回復するためにはその背後のある心の問題も考えてゆく必要があります。摂食障害の場合、自分の心の問題を「食べること」や「体重」にすり替えているのですが、回復する過程で、「それは本当は心の問題から来ていたのだ」と意識できる必要があるのです。ですから、当面の危険が去った後もカウンセリングを継続することが大切です。

そして、特に未成年の場合、保護者や親しい人がこの病気を理解して本人に適切に接することが回復の鍵になるので、本人が治療やカウンセリングを拒否されるようならば、家族の方だけでもカウンセリングをお受けになるようにお勧めします。

摂食障害の方は、どうか、あなた自身のこころと身体の声に耳を傾けて、大切にしてあげてください。

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