講演会原稿「思春期の心性」7

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 久しぶりに再会したC君は私よりも背が高くなっていて、顔つきは大人になりかけた少年のものでした。私との会話で慣れてくるとC君は家での生活が退屈になってきたこと、直接自分に言わずにお母さんに文句を言うお父さんに腹が立っていたことを語り、でも最近は自室で好きな女性歌手の歌を聞いて過ごす時間が一番ほっとする、とその歌手の魅力を語ってくれました。その歌手も中学の時に不登校を経験したということを知り、自分も負けないように強く生きないとと思った、と話してくれました。

 それからのC君は、一週間に一度私との面接に現れ、好きな女性歌手の話や最近の出来事を語ってくれるようになり、っまた父親への不満、母親は好きだが自分のことを心配し過ぎることがうっとおしいということ、将来はまだ決めていないが高校や大学には進みたいと思っていること、学校へ戻りたいがクラスメイトに受け入れられるかどうか不安なことなどを語ってくれました。しばらくすると自分の意志で一日数時間登校を再開してクラスに顔を出し、疲れると保健室で休み、少しずつ教室にいられる時間を増やしていきました。

 三年になり、C君は「まだ将来は決めていないが大学に行きたい。中学では友達を作れず青春らしいことを楽しめなかったので、高校ではそういう体験をしたい。」と語り、進学のためにできるだけ登校日を増やすようにがんばりました。遅刻や休む日もありましたが、一年二年に比べると見違えるほどに登校できるようになり、遅れていた勉強も先生に教えてもらいながら少しずつ追いついてきました。

 進学先は、自由な雰囲気でC君が気に入った私立高校に出願し、推薦で合格ができ、C君ご両親ともに心からホッとしました。

 C君のお母さんは私に「休み始めた当初はまさかうちの子が・・・と混乱して不安でいっぱいで、焦ってCの気持ちも考えてやれなかったと思います。親戚や近所の目も気になって自分も引きこもりたくなっていました。でも先生とのカウンセリングで自分自身が人の目を気にするあまり言いたいことも言わずに子どもと接してきたために子どもも自分が出せなくなったように思います。とりわけCは初めての子で男の子だったためにどう接したらよいのか分からずにうまく育てなければと気負っていたのだと思います。主人にももっと言いたいことを言ったり助けを求めたりすればよかったのですが、私も若かったのでできませんでした。今回のことで主人とも話し合う機会が増え、今はっ自分自身が楽になりました。Cのことはこれから基本的に彼に任せようと思います。困った時だけ話し合っていきたい。」とおっしゃって卒業されて行きました。

 その後高校では順調に休むことなく登校し、C君の願い通り青春を満喫している様子です。

    続きます