解離の心理カウンセリング

解離、多重人格、離人感は、つながりのあるものです。

どのようなつながりか。それはと、「こころが分裂している状態」だということです。

解離は、自分自身がしたことを部分的に忘れてしまったり、自分のことではなく、他人事のように感じたりする状態をいいます。それが重篤になると、多重人格(解離性障害)になります。

私たちは普段、自分の心はひとつであると感じています。しかし、実際にはそうではありません。すべての人の心は多かれ少なかれ分裂しているものなのです。

たとえば、夜中の気持ちと朝の気持ちには、多かれ少なかれ誰にでも差があります。気持ちは考えにも影響するので、夜考えることと朝考えることは違ってきます。そのようなことは誰しも普通に起こってくるものです。

けれども、分裂が硬直化したり、分裂した自分の間のつながりが途絶えてしまうと、それは上記のような病的症状になって、その人を苦しめることになります。「ジギル博士とハイド氏」の物語は有名ですが、あのお話が怖い理由は、誰しも自分にも、「自分ではコントロールできない自分」という存在に、心当たりがあるからでしょう。

なぜ、人格は分裂するのでしょうか?

それは、自分の自我を守るためだと考えられています。人は自分の心に取り入れられないものを、自分を守るために排除しようとするのです。

その一番極端な例が、多重人格です。多重人格は、幼いころに虐待を受けた人に高率に出現すると言われています。本来頼るべき身内から受けた虐待という激しいトラウマは、幼少期にはその人の自我にうまく取り込めません。けれども忘れ去ることもできません。そのため、自己を分裂させることによって、普段はよい自分だけで適応的に生きてゆこうとするのです。けれど、無意識に押し込められた自己は、何かの折に出てきて、その人を苦しめます。

解離状態の解決に必要なものは、人格の統合です。

カウンセリングでもそれを促すように働きかけます。

解離状態や、多重人格を例えていうならば、一人の人の中に何人もの人格が存在して、不仲になっている状態といえます。

具体的には、どのような自己がどのように機能しているのか、また、その複数の自己がどんな関係なのかを、自由連想の中でゆっくりと明確になるように働きかけます。

私は、このように一人の人の中に複数の自分が存在している様子を、「人格内対人関係」と名付けています。この「人格内対人関係」の仕組みをまず洗い出し、その上でその関係調整の仲介役をするのです。

私の経験では、ごく軽い解離や離人感でも、セラピーを続けてゆくと、この「人格内対人関係」が次第に明らかになってゆくことがしばしばあります。多くの場合、それは「表面的に他者と関わっていい人でいる自分」と、「奥に隠されて怒っている恐ろしい自分」に分かれています。それらがどんな関係で、お互いに相手をどう感じているかが実感を伴って理解されてゆくと、次第に解離状態は薄れてゆくものです。

人の心は、生涯分裂と統合を繰り返してゆくものです。人格の統合というのは、言い換えれば人が成長し、成熟する過程に他なりません。

トップページ