カウンセリングの頻度それぞれ

 前回のブログ記事でカウンセリングのご相談までの流れについてざっとご説明しました。次の段階として当日お会いしてお悩みを詳しく聞いていき、カウンセラーは問題についての大まかな見立てをしますと書きました。

 医療機関ではないので診断はできませんが、より具体的に、その問題がいつ頃の時点からどのようなきっかけで始まり、回復にはどれぐらいかかるかなど、その時点で推測できる大雑把な見通しのことを「見立て」と言います。もちろん一回限りでは推測にも限界がありますが、見立ての中には今後どんな方法でカウンセリングを継続していくのが望ましいかについてのカウンセラーとしての意見も含みます。

 もちろん、占いのように相談したいことを一度限りでお受けすることもあります。そのような場合はアドバイスだけの場合もありますが、例えば家族の問題についてどこの機関に相談することが適切か?とかどのような公的支援を受けられる可能性があるか?など、最近はなるべく明確に具体的にお伝えするように心掛けています。これは私のオリエンテーションである精神分析的な心理療法とは異なりますが、最近の社会の行き詰まりとともに大変な思いをしている当事者や家族の方が増えてきたことを感じますので、困っている方の道案内に多少でもなればとの思いで続けています。

 継続的にカウンセリングを受けたい方には前回お話したように頻度についてのご説明をして話し合います。つまり定期的に受ける場合、週二回以上か、週一回か、隔週か、月に一回かを決める話し合いです。

 昨今の経済事情では週一回も難しい人も増えていると実感していますが、本来は精神分析的なカウンセリングでは週一回は来ていただくのが理想です。これはやってみると一番分かりやすいのですが、日々の思いや悩み、辛かったこと、考えたことなどを思い出して話せるのが大体一週間以内だからという理由もあります。それ以上間隔が空くと忘れたり、仮にノートに書いてもリアルな感情までは思い出せなくなってしまいます。精神分析的なセラピーではなんでも自由に思い浮かぶことを話すのが原則です。それをセラピストと共有したり質問を受けたりすることで、そのような思いの中にある、自分では思ったこともない視点が見つかることもよくあります。

 また、問題が深刻で長期間続いている人、不安定なアタッチメントの人も、なるべく週一回以上は来ていただける方がセラピーがうまく進みやすいです。こういう場合も間隔が空きすぎると日常生活で起こる不安をなかなかセラピストと共有できにくいのでご本人が辛くなり難しいのです。

逆に隔週でも大丈夫なケースもあります。当事者でなくお子さんの保護者のように家族の問題を話し合うセラピーは、隔週や、安定してくると月一回でも大体いけます。また週一回は時間的にあるいは経済的に難しいが自分自身のためにカウンセリングを継続したいニーズが強く、また比較的安定している場合は隔週でも進んでいきます。

 頻度についてはそれぞれの事情もありますし、以前お話ししたように最初から強制することはありません。むしろ事情をお伝えいただければ、それに合わせて頻度も調整します。最初に決めた頻度も、しんどくなってきたら増やしたり、逆に元気になってきたら減らしたりの増減も話し合って可能な限り対応できます。

 ただ、長期間のセラピーになるとどうしても行きづらくなったり一見悪化しているように見える時期も通過する必要がある状況があります。そのような時、前回もお話しましたが、すぐに決めるのでなく、まずカウンセラーと話し合ってから決めてほしいと思います。長期間のセラピーではどうしても「転移」という現象を避けることができないために、お互いの言動に敏感になってしまう時期が生じます。もちろんこれはクライエント側だけでなくセラピストも同様に「逆転移」に注意深くなければいけない状況です。そして、どうしてそうなっているのか、それにどのような意味があるのかを考えることが、精神分析的なセラピーではとても重要になってくるからです。

 最後に、私自身長年のセラピーの体験を通して言えることですが、時間を決めて自分の内面の気持ちを定期的に話す体験は、他の場所では得られない貴重な体験になると思います。その場は友人にも家族にも話したこともない話をする場所となりますし、話せば話すほどもっと広く深く自分自身が見えてきます。もちろんそうなるための前提条件としてセラピストとしての私も力を尽くして信頼を得る必要がありますが。

一人では考えたことのない、あるいは体験できない言葉、感情、気持ちがゆっくりと自分の中から湧いてくる体験は不思議なものです。それには喜びも悲しみも不安も怒りも含みます。ですが気が付くと以前とは違う感じ方、考え方ができるように少しずつなっていくことが多いものです。

この、とても困難ですが得難い体験を一人でも多くの方に体験していただけるお手伝いができると嬉しいと思います。