前回のブログからかなり経過してしまいました。暑い夏がやっと終息に向かい、お盆休みをいただいていた当相談室も明日から再び営業となります。
さて、前回からの続きです。
赤ちゃんが最初に達成する必要があるのはこのアタッチメント形成ですが、もう一つ次に重要な時期があります。それはイヤイヤ期と呼ばれる第一次反抗期です。お子さんが最初に発した言葉は何だったでしょうか?一番多いのはママ、マンマですが、イヤという言葉も比較的早期から出てきます。ちなみに私は以前大阪に住んでいましたが、近所の赤ちゃんが最初に「イヤ!」でなく「アカン!」というのを聞いて感動しました。
発語と同時に反抗が始まるというのは、とても面白い現象だなと思います。言葉を発するということは相手とのコミュニケーションを意図していると同時に別の対象と意識しないといけないからでしょうか?大人でも「わざわざ言わなくても気持ちを分かってほしい。」と、私たちは親しい人に対して思ったりしますが、言わなくても相手が分かるはずだというのは、相手と自分とがいっしょだという一種の甘えがあるように思います。
話がそれましたが、つまりイヤイヤ期というのは、周囲の大人にとっては大変ですが、子ども自身にとっては、自分の意志は相手とは違うのだ、自分の行動は自分で決めることができるのだという一種の発見です。子どもは「イヤ!」と怒りながらどこか楽しそうですね?自分の行動は自分でコントロールできるという発見と共に相手もある程度コントロールできるということを発見してわくわくする気持ちもあるからです。
しかしこのイヤイヤ期はアタッチメント形成ほどには当たり前に表れるものではありません。なぜならば自分が頼りにしているお母さんに向かってはっきりと「イヤ!」と意思表示して反発することは、不安を和らげてくれる大切な対象を傷つけて怒らせる危険があるからです。それは子どもにとって未知の冒険で、かなりの勇気がないとできないことだからです。
アタッチメントが基本的にお母さんに近づくことで不安を和らげるのに対して、イヤイヤ期はお母さんと自分とは違う意志を持つのだということ、つまりお母さんから独立した存在だと主張すること、お母さんから離れて自尊心を保つことです。
「近づくこと」と「離れること」。この二つが後に思春期に起こる心の変化と密接に関係してくるのです。いわば思春期に起こる葛藤の序章のようなものです。
有名な理論家のマーラーは、乳幼児の発達をアタッチメント形成とイヤイヤ期を含めて「分離個体化期」と名付けたのですが、これは単純に言うと幼児がお母さんと近づいたり離れたりしながら成長していく様子を理論的に説明したものです。このように幼児期の子どもの成長には、自分の安心できる人と外の世界を自由に行き来できることが大切になってくるのです。よく言われる「安全基地」としてのお母さんです。
この二つの時期をうまく通り過ぎた幼児は、お母さんと自分は別の人間で、お母さんには別の意志があることを実感として理解できるようになります。そして自分の主張を伝えつつお母さんを気遣えるようになります。自分とお母さんが別の人間で違う意志を持つことを実感として理解するのです。