みんなと同じになりたい

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カウンセリングの中で、「みんなと同じようになりたい(なりたかった)。」という言葉を口にするクライエントの方が、私の体験ではとても多いのです。どの人も、男性も女性も、「みんな」と同じになってみんなの中に入りたい、そうすればうまくいくと切望しているかのようです。

自分はみんなとは違い、みんなのようにはなれない。それは自分が劣っているから、変だから、悪いから、怠けているから・・・。そのような思いを口にされます。

「みんな」って何だろう?なぜそれほど「みんな」と同じになることを切望するのだろう?と考えていたのですが、話を聞いているうちに、「ああ、みんなとは、お母さんのことなんだ。」と、ふと思い当たりました。

この国の多くのお母さんは、子供に対して「優秀じゃなくてもいいから、みんなと同じになってほしい。」と願っているようです。たぶんお母さん自身も「みんなと同じ」が大切だと思い育ったので、我が子が人と違うことで、いじめられたり仲間はずれにされるのでは?という不安があるのでしょう。「そんなことをすると、みんなに笑われるよ。」などと子供の頃に言われたことのない人の方が少ないことでしょう。

けれど子供にとっては、顔のない大勢の「みんな」よりもずっと、お母さんの方が大切です。「お母さん」と同じようになりたい、「お母さん」に好かれて認められるようになりたいと、子供は小さい頃本能的に思うものです。その大切なお母さんが自分に「みんな」と同じであることを求めているとしたら、そして子供がお母さんから「自分」を受け入れてくれていないとどこかで感じているとしたら、子供は「みんな」の一員になれたなら、お母さんに受け入れられると感じるのでしょう。

子供時代の思いというのは、多くの場合忘れられてしまい、後に残るのは、「みんなと同じにならなければならない。」という切迫感だけになってしまいます。それでも自分はみんなと同じだと思いこめるうちはそれでもよいのですが、何かのきっかけで「みんな」から外れてしまったとき、そのような人は安定を崩してしまいます。

そうして相談室に訪れた人たちが、自分が求めているのは「みんな」ではなく、ただ一人大事な人との安定した関係であり、その人からの自分への理解だったのだと分かるまでには、長い時間が必要になります。が、それが頭でなく心から腑に落ちる頃には、いつの間にか自分を大切にする気持ちも回復してゆくものです。

ある人は、終結直前に、「みんななんていないと分かりました。みんな一人一人違うのですね。当たり前のことですが。」と私に言いました。

「みんなと同じになりたい。」と口にする人は、実はお母さん(あるいはそれに代わる大切な養育者)に受け入れられたい、と切望しているのだと、私は今は理解しています。

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