カラスに学ぶカウンセリング

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 先日、自宅から外を眺めていると、向かいの建物のベランダに、二羽のカラスが並んでとまっているのを目にしました。二羽で寄り添っている様子から見るとどうやらオスとメスのようです。

 多分オスが後からメスの隣にやってきたのでしょうが、隣り合わせてとまっているのだから、メスの方もオスに対してまんざらではなさそうです。やがてオスの方が積極的にメスに近づいてメスの毛づくろいをし始めると、メスはそっぽを向き、少しだけオスから離れました。私は、「ああ、あのメスは近付かれすぎるのは嫌なんだな。」と思って見ていました。けれど、メスが飛び立つ気配はありません。

どうなるのかな?と興味を持ってその様子を眺めていましたが、オスはメスの毛づくろいを止め、ちょっと離れて、今度はオスの方がそっぽを向いたています。そしてそのうち身体を低くしてまるで眠るときのように休み始めました。オスはなかなかの策士のようです。

すると面白いことに、今度はメスの方がオスの方向に顔を向けてオスを眺めています。オスは身体を低くしてじっとしたままです。まるで「僕は何もしないから、どう触ってもいいよ。」とでもいうような様子です。

これは面白いな、どうなるのかな?と見ていましたが、ちょうどそこに人が近づいてきて、二羽のカラスは飛び立ってしまいました。二羽の関係がどうなってゆくのかが分からずじまいだったことが残念です。この間20分あまりでしょうか。カラスは頭がよいとは聞いていたのですが、その感情の機微がまるで人間のようで驚いたものでした。オスはそのメスを怖がらせないように、ただ近くにいるだけでじっとしていた方が良いことが本能的に分かったのでしょう。

カウンセリングの中でもこういうような現象がよく起こります。カウンセリングで話をすることは自分の悩みや本心をさらけ出すことですので、それまでそのような体験をしたことのない人にとっては不安に感じるものです。もちろん、何が不安に感じるか、どの程度不安に感じるかは千差万別ですが。

カラスのオスがとても賢いなと思ったのは、相手の不安をちゃんとキャッチしたこともありますが、相手の不安を感じた時に、相手と仲良くしたいという自分の気持ちを一旦置いて、受身の立場になって相手にその場の主導権を渡した方がいい、と判断できたことです。そのような判断は人間でもなかなかできないのではないでしょうか?

人は新しく出会うこと、不安に感じたことに対して、それを確かめたいという好奇心があるものです。好奇心と不安との微妙なバランスで、不安よりも好奇心が強い時に、不安に打ち勝って近づくことができるのです。

全く不安のない状況は安心ですが、未知の世界や新しい自分に出会うチャンスもありません。適度の不安と好奇心のバランスが保てる時に、未知の世界に踏み出す勇気が得られます。

カラスに学ぶことは、もし相手に心を開いてもらいたいのならば、相手のその微妙なバランスを保つためにこちらがうまく調節する必要があるということでしょう。

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