うつや神経症的な要因の不登校のお子さんの症状は、最初、腹痛や頭痛などの身体的症状や、あるいは言葉にできない不安から始まる場合が多いものです。
初期の段階では、本人もどうして自分がそうなっているのかわけが分からない状態です。実はそこに至るまでにはそれまでのたくさんの、生育歴を含めた積み重ねがあるのですが、無意識の努力でなんとか持ちこたえているのです。ところが、ちょうどコップにいっぱいの水が最後の一滴で溢れ出してしまうように、一見些細な出来事がきっかけになってこれまで耐えてきたものが堰を切ったようにあふれ出し、本人も止められない状態になった時に、学校に行けなくなってしまいます。
この段階では、心ではなく身体からのサインで「もう我慢の限界ですよ。」と訴えている状況ですから、まず必要なことは休息です。この段階で無理に登校を促すと、かえって不登校を長引かせたり、部屋から出られなくなってしまうこともあります。
わけがわからない不安や、心臓がバクバクすると訴える人もいます。不眠の訴えも多くあります。これは、交感神経が興奮し続けて身体が休息できないためで、周囲から見ると何もしていない、怠けているとしかみえなくても、本人にとっては本当につらいものです。本人自身が一番困っているので、周囲の人はそれを理解して見守ることが一番大切です。
その時期が過ぎると、今度は心身の疲れが一気に感じられて、逆に過眠になる時期が来ます。心身が長い緊張状態から解き放たれて、一気に緩んでくる状態です。「なんでそんなに眠れるんだろう?」と、不思議なぐらい長時間眠ります。これは、それだけこれまで疲れ切っていた反動で起こってきた状態ですから、この時期はゆっくり眠らせてあげて下さい。
個々の違いはありますが、本格的な不登校の場合、そういう身体的なブレイクダウンから回復するまで、数週間から数か月かかります。そのような時期にゆっくりと休めた場合、だんだんと心身の疲れは回復するものです。
回復の目安として、家にいて「退屈だ」と感じられるようになることがあります。本当にうつ状態がひどい時には休んでいても退屈にはなりません。
ここまでの回復には、本人のカウンセリングよりもむしろ保護者の方へのカウンセリングのほうが有効です。なぜならば、この時期には本人は自分の状態や感情を言葉に表すことが難しいからです。逆に保護者や家族の方にとっては一番不安な時期です。「なぜこんなことに?」と焦り、本人を問い詰めたり、無理に登校させようとしてかえってこじらせることが往々にあります。そのような事態を避けるためにも、保護者や家族の方を支えることが、本人にとっても効果的に働くのです。
さて、そんな状況が一旦落ち着き、家の中ではごく普通に生活できるまでに回復し、少々退屈や寂しさも感じるようになった時期が来ます。だからといってすぐに以前のように登校(あるいは社会復帰)は難しい。そんな時が最もカウンセリングに適した時期です。これまではわけのわからない不安だったり、身体症状だった、自分の心の中の感情を、カウンセリングの中でさまざまに出してゆくことで、自分の心の一部として受け入れて成長できる機会だからです。
その時期に適切なカウンセリングを受けることで、再発を予防できるだけでなく、人間的な成長をも期待できるのです。
これは、不登校のお子さんだけでなく、大人のうつの方にも当てはまります。
この時期にどのようなことが起こりがちか、それはまた別の機会にお話ししたいと思います。