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思春期

講演会原稿「思春期の心性」9

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 さて、話をC君の事例に戻します。C君は「イヤイヤ期」がなかった。つまり自分夫行動を自分で決めることの練習を幼児期に十分できなかったということです。これは思春期に負担になります。なぜならば、前に話したように思春期は親から心理的にも離れなければいけないという本能的な欲求が強くなり、自分という存在に目を向けるようになっていくからです。中学では必然的に先生の対応も厳しくなり、同級生同士の目も気になるようになります。C君の不安は強くなります。でも自分で「学校へ行きたくない」とはこの段階では言うこともできませんし、意識にさえ上りません。

 ちなみに多くの不登校の生徒は、特に不登校初期は「明日は学校へ行く」と言って登校の準備さえします。でも当日になると朝起きられなかったり体調が悪くなって学校へ行くことができません。

 C君の場合も、この時期本当に学校へ行きたいと思っているのですが、頭痛や腹痛、起きられないといった症状で、無意識と身体は拒否しています。

 不登校生徒への登校刺激はケースバイケースですが、C君のように身体症状まで出ている場合は控えた方がこじれないためによいようです。この時期にC君のお父さんのように無理に登校させようとするとこじらせるだけでなく本人との関係も悪くなります。

 そのために本人との直接のカウンセリングでなくお母さんとのカウンセリングをすることが多いのです。

 思春期と言っても高校生ぐらいになると、本人との言葉でのカウンセリングが成り立つようになりますが、中学生ではまだ自分の気持ち、感情を言葉で表す能力が未発達で、本人と言葉を使ってのカウンセリングがうまくいきません。まして不登校では外出もままならないので保護者とのカウンセリングが中心になりますが、そちらの方がうまくいく場合が多いのです。この時期は幼児期の課題のやり直しの時期と言いましたが、幼児期の課題をやり遂げて成長するためのセカンドチャンスでもあるのです。そのために、幼児期とは違ったありかたですが、同じように親が「安全基地」となってあげることが重要になるのです。

「幼児期の課題のやり直し」というとよく「赤ちゃん返りするのですか?」「甘えさせてやるにはどうしたらいいのですか?」と質問されます。たしかに一時期C君もそうであったように、お母さんに近づく時期を体験することも多いのです。男の子も女の子もお母さんと一緒に寝たがるなどということも良くあります。

 ただこれは、それまでのストレスからくる不安感を落ち着かせて安定しようとする自然な行動ですので、それを拒むこともこちらから近づいて「甘えさせる」ことも必要ありません。一時的なものだと考え、子どもが安心するまである程度応じてあげれば自然と消えていきます。

 このあたりの兼ね合いを、これまでこちらから働きかけてあげることに慣れていたお母さんはよくわからないことも多いのですが、私は「来るものは拒まず去るものは追わずで接してあげてください。」とお願いしています。つまり子どもが自分の意志で行動を決めることを受け入れてあげてくださいということで、自発性を大事にしてあげてくださいと言うことです。 

 話が少し逸れますが、思春期の子どもに接する時、「自発性」という言葉はキーワードです。これは子どもがなんでも思い通りにしてもよいという意味ではありません。子どもが自分から声を上げたり動き出す前に何かを与えるのではなく、自分の意志で何かを求めた時にそれを受け入れること、あるいははっきりとノーと言ってその理由を伝えることです。例えばスマホをいつどのように買い与えるかなどはいい例です。子どもは友達が持っているなら自分もと、早く欲しがるでしょうが、それをいつどのような条件で、どう使うことを求めるか?は子どもとの話し合いの良い機会になります。

 どうも日本では子ども個人の「自発性」を育むことにあまり重点が置かれてこなかったようで、親も教員も子どもにこちらから何かをあたえようとしがちになってしまいます。でも子ども自身が「欲しい」と感じ、手に入れるために言葉や行動を起こす前に与えてしまうことは、子どもが自分で「自分はこれが欲しい。」と思うチャンスを失ってしまうことでもあります。欲しがる前に与えられたものには、手にできた時の達成感がありませんし、自分はどんな気持ちを持っているのかを考えるチャンスも失ってしまいます。

 このことは物に限らず、青年期の可能性のようなものにも言えるでしょう。イギリスの有名な小児科医で精神分析家のウィニコットは青年期についてこう述べています。「青年は理解されることを求めていない。人に理解されるということがあれば自分で見つけたことにならない・・・青年期の問題を解決できるのはただ時間だけ。」

 

 続きます。

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